空・風・君と…4

ツカサが見たこともない料理にひたすら舌づつみを打っているころ、コーイチは愛車を飛ばしていた。

途中、花屋で小さなブーケを買い、車を走らせると賑やかだった街並みが、やがて静かな林へと景色を変え、林を抜けると広大な草原が姿を現した。

更に道を進んでゆくと郊外に大きな屋敷が月明かりに浮かび上がり、コーイチはその手前で車を止め、ブーケを持って車を降りた。


屋敷の前には広々とした庭園がよく手入れされており、バルコニーの奥の出窓から灯りが漏れて庭にその影を落としていた。

コーイチは小さな小石を拾うとバルコニーにそっと投げた。石はコツンと小さな音を立てて転がった。


しばらく待つと窓が開いて誰かの人影が覗いた。その影はコーイチに気づくとさっといなくなり、やがてコーイチの前に息を切らして再びその姿を現した。

「…そんなに慌てなくてもよかったのに(笑)…ごきげんよう。」

「ご、ごきげんよう……。」

「これ、途中の花屋で買ったんだ……小さいけど可愛くて君みたいだなと思ってさ。」

「あ、ありがとう……嬉しい……。」

小さなブーケを愛しそうに胸に抱える姿にコーイチは胸がギュッとなり、思わず抱き寄せていた。

ブーケが下に落ちて、ふたりの顔が近づいた。

「こ、コーイチさま……。」

「ケリー…君はいつもとてもいい匂いがするね……。」

「そ、そうですか?……コーイチさまのほうこそ、とてもいい匂いです。」

ケリーは恥ずかしそうに微笑んだ、その愛くるしい瞳にコーイチは思わず彼女にkissしようと顔を近づけた。

「おんどりゃーこんな時間に泥棒猫みたいにコソコソ来やがって!!!!!その薄汚い手を放さんかーい!!!!」

コーイチの頭上にすごい勢いでどなり声が聞こえ、ケリーもコーイチも顔を上げると今まさにバルコニーから飛び降りんとする人影が見えた。

「お、お兄ちゃん!

「やれやれ、今宵もいいとこで邪魔が入ってしまったな・・・。エンドリケリー殿、ごきげんよう。まったくもって失礼した、また日を改めて伺うことにしましょう。


「二度とそのニヤけた面見せんなや!!!!はよういねーーーー!!!!!  

お兄ちゃんやめて!!!!…コーイチさま、ごめんなさい……。」

「君が謝ることないよ。……また来るからね、おやすみ

「はい……おやすみなさい。」

コーイチはケリーの頬にそっとkissすると颯爽と暗闇に消えていった。



「…ったく!追い払っても追い払っても野良猫みたいに来るやなんて どういう神経しとるんじゃあいつは!!!!!!だいたいあのニヤけた面が気にくわん!!!!ケリー、お前もいちいち相手にすんなや!!!!思い出してもむかつくわ!  

「お兄ちゃん、ひどいやん。コーイチさまはお忙しい身いを時間をさいて会いにきてくれはったのに追い返すやなんて。」

忙しかったら来んかったらええやん。お前も何やねん、あいつの前ではしおらしい言葉使いよってからに。今みたいにふつーにしゃべったらええやん。」

「いやよ!こんなひどい訛りの田舎娘だってバレたら嫌われてしまうわ……。」

ケリーはワッと泣き出してしまった、これには兄のツヨシも慌てた。

そ、そんな泣くことないやん、オレらの言葉は西のカンサイ・シティの由緒正しいお国言葉なんやで?なんも恥ずかしがることあらへん、堂々としてたらええのんや。」

「……だって……トーキョー・シティのご令嬢の皆様、とても綺麗な言葉でしゃべらはる、コーイチさまも品のあるお方で・・・…うちなんかに会いにきてくれるだけで・・・…それだけでいいの……それ以上はなんも望んだりせえへんから……お兄ちゃんお願い。今度コーイチさまが来られたら今日みたいなことせんといて。そっとしておいてよ。」

「……そやかて……お前がほんまにそれだけで満足してんならええ。けど、それ以上望むようになって、辛い思いするんなら お兄ちゃんは知らん振りできひんからな。」

「……大丈夫……そんなこと……ありっこない……うち、自分のことちゃんと判ってるから……。」

ケリーは涙で濡れた瞳で窓の外を見た。月が輝いていた。




コーイチさま……あなたはこの月のように……ううん、それよりももっと美しくて……うちには届かへん……。








「あーあ、もう少しでケリーとkissできたのに。兄上はどうも相当シスコンみたいだな・・・…これはハ-ドル高いかも。……んー…燃えてきた…。」

コーイチはケリーの残り香を楽しみながら抱き寄せたときのケリーの顔を思い出していた。

愛しさがまた大きくなっていた。












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